長引く「コロナ」退散を願うためである。
後ろの国が名勝に指定している「耶馬」と称される大きな岩山の崖の下に、それは建っていた。
六郷満山の中でも有名なお寺で割と近くなのに、その前をよく通るのに、境内へはまだ踏み込んだことのなかった古刹だ。
境内に入っていくと、まず掃き清められた前庭に、白砂によるきれいな「砂紋」が描かれているのが目についた。
その奥には、見事な彫刻が施された釣り鐘を収める鐘楼がある。
正面のガラス戸をを開いて本堂に入っていくと、実に大きくて立派な仏像が並んでいた。
本尊は、正面に安置されている「不動明王」だ。
その両脇には、これまた立派な「大日如来」や「薬師如来」さんが、並べて置かれていた。
さらにその横や後ろの「十二神将」や「菩薩」さん等すべてを合わせると、何と16体もの木造の仏像が安置されているという。
そして、その中の大半が県や市の有形文化財に指定されている。
いずれも平安時代・鎌倉時代に作られた古い仏さんたちで、「厄除け」や「国家安泰」にご利益があるというので、しっかりと拝ませてもらった。
仏像以外にも興味深かったのは、堂内横のケースに保管されている「鬼会」に使う面だろうか、かなり古い木彫の面が3つ。
見開いた眼や口がなかなかの迫力だ。
また、天井を見上げて驚いた。
なかなか他では見ないような極彩色の曼荼羅模様。
鬼や飛天を象ってあるのだろうか?
奇抜な構図は、何ともなまめかしくさえ見える。
それからお堂を出て、境内の右手にある急な階段を上がっていくと、神仏習合の地では普通な「身灌(みそそぎ)神社」が併置されていた。
その後ろは、もはや切り立った岩山の崖だった。
もちろん、ここでも念入りに拝ませてもらった。
小一時間もいただろうか?
その間、寺も神社も静寂に包まれ、だれとも会わなかった。
ただ、鳥の声と木立が風にそよぐ音だけが聞こえるだけだった。
寺の裏手には、割と有名らしい「十六羅漢」たちが置かれた石仏公園となっているので、「六郷満山文化」に触れたければ、ぜひとも訪れたい名刹だ。
場所は、豊後高田市街地から国道213号線を北上し、「スーパーバリュー真玉」の先を県道654号線へと右折し、山手へ8kmほど入ったところ。